8編の短編から構成されていて
初めの2編は主人公が翻訳家のときで
残りは探偵になってからの話。
初めの2編は
「いつもの柴田さんの作品とちょっと
ニュアンスが違うな…」と
思っていたら翻訳家から探偵になるための
布石だったわけで。
探偵になってからはいつもの
柴田節(?)と言うか本領発揮。

さて、全編に渡ってやっぱり
柴田さんらしく「女性の味方」というか
「苦しんだね、でも、大丈夫」っていう
やさしさが溢れていて。

一作目の主人公の親友が死んだ。
初めは自殺として片付けられたけど
背景に夫の浮気あり。

5作目のさえない主婦が浮気している、
という旦那からの依頼で張り込むが
どうしても浮気しているとは信じられずに
いたけど、最後は「昔のスイマーとしての
栄光が忘れられず…」的な心理からの行動。

6作目は究極で
やっぱり旦那が嫁が浮気しているかも、
の依頼で張り込んだ結果
嫁は「AVに出演して金を稼いでいた」
だけのこと。
「浮気」はしていない。

弘美は当然理解した。
優子は夫を試したのだ。
夫にも真実を語らせようとしたのだ。
あなたが欲しいのはあたし自身なのか、
それとも、妻、と言う幻想なのか。
さあ、本当のことを言ってごらん!


公園に汚物を捨てた犯人捜しにいたっては
「私は自治会が私立探偵を雇ったという
話を耳にして、自分が犯人になろうと思った。
…他に方法がなかったのよ。
離婚する方法が。
夫は絶対に別れないと言い張っていた。
見栄っ張りで自分のことしか考えない男。
(中略)
それしか自由になる方法はない。
…ごめんなさいね、探偵さん。
アナタをりようしてしまって。
でもおかげで私、自由になれた。
それだけじゃないわ、あの男に最大級の
復讐もできた。」


男たちの浮気や身勝手さに耐え忍んできた
女たちの「復讐」劇。
表題作は「求愛」だけど「復讐」の方が
ぴったり来るかも。

いつまでもおとなしく我慢しているのが
女じゃないですよ、と。

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