短編集
収録作品名

謹賀新年
ぼくの神様
がんじっこ
孫の恋愛
しっぽ
この大樹の傍らで


子供向けではなく、一般書、初出は産経新聞大阪本社夕刊らしい。ので、少年ものでもなく。
でも、この人らしい人間にとって「大切な物」を色々な形で表現している。

私が好きなのは「がんじっこ」と「孫の恋愛」

がんじっこは超頑固なおばあちゃんの話。
頑固すぎて村から嫌われているので村役場の若い職員が「説得してこい」と無理やり押しだされる。
で、家庭訪問するんだけど、「上がっていきな…」と。
で、なぜシゲばあさんが「がんじっこ」になったのか理由を説明してもらうんだけど、エピソードが辛い。
優しい夫が戦争から帰ってきたら「鬼」になっていた。
一体に何があったのか。そしてどうして出征の時に「行かないで!!!!!」と言えなかったのか。たとえ非国民と言われても二人で逃げなかったのか。そして死に際に夫が昔の夫に戻り「お前は生きれ」の一言を残して亡くなる。
その言葉を頼りに「あの時、言うべきこと取るべき態度を取らなかったからこんな結果になった。なら、これからは言いたいこと、自分が正しいと思うことははっきり口に出そう。」と。それが他人から「がんじっこ」と言われようが嫌われようが他人がどういようと夫と姑に恥じない生き方をしよう!と。

あの時代、行くな、死ぬななんて言えなかった。
言えずに送り出してしまった。

「うちはせめて亭主とそれに姑との約束を果たすんや。とことん生きてやるんや。がんじっこと呼ばれてもええ。嫌われてもええ。自分のここんとこに」
シゲばあさんがこぶしで胸を叩く。
「ここんとこにある気持ちを偽らんようにするんや。
そうやって、生きてやるんがいね。お棺に入ったあん人の死に顔を見ながら、決めたといね」



もう一つの「孫の恋愛」の主人公はキツネ。
それも「ババ様」と尊敬をこめた呼び方をされるほどの長寿の。
キツネ族は人間に住処や命の危機にさらされているのでババ様の息子がある壮大な計画を打ち明ける。
「プロジェクト0」
それは「優れた子どもたちを選び出し、教育し、人間の世界に送り込む」こと。
そして、要職につかせ、一族が牛耳る人間社会をつくること。

そのプロジェクトの一員として送り込まれたババ様の孫がよりによって「人間の娘」に恋して、悩んだ末ババ様に相談に来る…という話。

う~~ん。私がこの話を展開するなら
「プロジェクト0」それは
ある「特定」の感情を持つ人間にだけ「生存価値」を認められ、それ以外の人間は全て「末梢」。DNAレベルまで一切残らないウイルスを開発、散布。
一部生き残った人間は、「奴隷」として動物に従う。
ただし、牙も鋭い歯を持たない裸のサルに奴隷&家畜としての価値すらないので、絶望を感じた人間に最後のプレゼント&慈悲として絶望=突然死のプログラムが発動する…

位は、作るよな。
もう、ババ様達の様に「共存をめざす」なんて可愛い「寝言」言わないな。
人間は増えすぎた。それも自分たちの力を過信しすぎ、自然界の一部であることを忘れたかのような振る舞い。

私の根底に「人間嫌い」があるから、どうしても人類滅亡を心から望んでしまうから仕方ないのだけれど。

最後の一遍「この大樹の傍らで」も地球は放射能、大気汚染による環境劣化を進み新種ウイルスによる感染病により人類滅亡の危機にひんしており、宇宙に飛び出した人間の末裔が再び地球に戻ろうとする話である。
最終テーマは「今度こそ、地球と共に生きる」である。

でも、私が話を作るとしたら
地球に戻るロケットを空中分解して残存者0、とする。
どこまでも悲観的、救いようのないアンハッピーエンドのストーリー展開(読者が付かないタイプだな…)にする。
人間は、一度地球を汚して自分たちだけで逃げて、逃げた先でまたウイルスがまん延汚染したからと言って、戻って来てはいけないのだ。
汚した末裔だけが生き残るのは許さない。
最後まで責任を取れ。
宇宙で人間という種を葬り去れ。

罪もない動物を病気であるがゆえに殺傷するのであれば、さあ、人間に新種ウイルスが発生したらどうるする?
実に見ものだ。殺して、村一つ潰して、そして「これで残った人間は安全だ」と言うのか?

「平等」に1人残らず、死にましょう。

そんな、怒りを感じる。

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