10人の女性(うち一人はネカマの男性)を主人公とした短編集。
年齢も背景も全く違う女性たち。
でも、現実にこの10人を足して割った人間ばかりじゃないだろうか?
不安と自信のなさ、いらだち、怒り、恐怖。
こうやって小説と言う形で見ていたら「ばかだなあ…」「どうしてそうなるのよ」って思うんだけど、現実に自分がそんな場面に陥ったら同様な行動を取るんだろうな…と
思わずには居られない。

例えば一作目の「りつ子」。
クリーニングやで働いている独身。ホストにハマりデートの度に預かり物の毛皮やブランドワンピを勝手に持ち出して来て、セレブを演出。挙句お決まりの「店を出すからお金貸して」と言われ保管している毛皮、着物を売って金にしている。その内捕まるのは解っているのだけれど「これは愛の為にしたこと」と考えている。

「和美」にいたっては
中学で養護教師をしていて、保健室のベットに30分ほど寝に来る雅也を意識してる。ずばり「彼と寝たい」。
けれどそれはやってはいけないことと自戒して持ち込まれた縁談を受け入れ退職を決意。退職日に雅也がやって来て
「見捨てるんだな」と言われ必死に自分の気持ちを押し隠しキスで終わらせる。
「この続きはあなたが大人になったらね」「絶対だな」と別れる。あなたが大人になったら私のことなんか忘れちゃうのに…と思いながら。
そして結婚式当日、相手の前妻の子どもが連れて来られる。そう、雅也だった…
うわ~~この先、どうなるの~~~って思ったし。

短編で読者に感想を持たせることのできる作家って本当に技量のある人だと思う。
もしかしたら長編より短編の方が向いている作家さんかも…

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