2008年発行
著者3作目の主人公は「編集者」。
なので、読み始めた時「またか…」と思った。
でも、一応は舞台、出演者は出版社や作家が出てくるが、
少しだけ毛色が変わった作品には仕上がっていた。

とはいうものの、どこか「陳腐」。
主婦雑誌を作っていた42歳の主人公が文芸に回され、大作家に気にいられ、セクハラまがいの行為をされる一方、営業の「モテ男」にまで交際を迫られて、肉体関係を持ちそうで家庭の事を考えたり(結局は寝ちゃうんだけどね…)挙句に、小説のネタにまでされる始末…

42歳の設定の割にはどうも身の振り方と言うか、接待とか全く慣れてなくてものすご~~く読んでいて歯がゆいというかなんというか…
まあ、そのウブさを気に入った、という設定だから仕方ないんだけど、要は「不倫&恋愛もの」というジャンル。
女の40代の「体の乾き」とか「夫との冷えた関係」など「おお~!」と共感する部分もあるだけに、ラストの歯切れの悪さというか「はあああ??」的な落ちにがっかり。
そう、もっとそっち方面を突き詰めてほしかったのにどっか中途半端。「で、何が書きたかったの?」って感じになってしまっている。あれもこれも詰め込み過ぎて空中分解。
まあ、不倫したらどちらかが代償を払わねばならないという「当たり前」の結論で終わらせてほしくなかったな。
ラストのまずさが「どこにでも転んでいる作品」に貶めたのは確か。

この人の本はどうしても「出版社あがり」という経歴を知っているせいかどうしても好きになれない。
本来作家であれば書く舞台について知らなければ徹底した取材をしたうえでリアリティと空想をうまくミックスして話に幅を持たせると思うのであるが、この人の場合「それ、モデル(作家に言い寄られて退職した人、不倫した人)がいて現実を適当にミックスして一つの話に仕立て上げた、って感じがどうしてもぬぐえない。

もっと言えば3作とも「どの主人公にも魅力を感じず、共感を得にくい」。
それこそ担当編集者から「もっと、人物を書き込んでください」というダメ出しがでないのか?って感じ。(笑)

なまじ作家と担当の関係を熟知している人だけに担当も気を使うだろうなあ…と、作品とは別の裏側が見えてきて面白くないのである。

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