乙武氏が「教育パートナー」だったかを引き受けた時に著者が「教育、を語るには教職をもっていないと「資格のない奴に教育を語るな!」と中傷を受ける事を覚悟の上で活動なさってください。」とアドバイスされた事が先日読んだ本で紹介されていた。
著者(重松氏)自身も「現場を知らないくせに」的な中傷を受け「いえ、私は教職免許持ってます」と言うと相手はたいがい「黙って」しまうのだとか。
教職免許持たざる者は教育を語るな、ってその時点で「差別」が生じ「いじめ」なんじゃないの?と思うのですが。
子どもには「仲良く」と言う割にじゃ、大人はどうよ?のせま~~い世界が広がっているわけで。

てなことで、本編5編からなる短編集。
5編が全て「いじめ」の内容。(最後の『ビタースイートホーム』だけが若干毛色が違う)

あまりにも生々しい「いじめ」描写の為、息ができない。
ましてや「子どもを持つ親」の視線で読んでしまうので
体中から血が噴き出しそうなぐらい心が痛い。
特に最初の「ワニとハブとひょうたん池で」と「ナイフ」はこの話がどう決着をつけるのかと一気読み。

子どもがいかに孤独に闘い、その戦う様を親に見せずに隠す心理がつらい。
親の前ではとりわけ明るい子どもを「演じ」、そして一人傷ついて行く…
「ナイフ」に至っては無力な親がクローズアップされ、親の無力感特に「父親不在」を感じずにはいられない。

父親って本当に役に立たない。
「逃げるなよ」って言いたくなるぐらいに。
逃げてすべて母親に押し付けるなよ、と。

男っていいよな~「お前に任せた」「ほっておけ」って言うだけで責任から逃れられて。
仕事している、っていうだけで厄介な問題から目を背けれて。(まあ、これは男だけじゃないけど。PTA活動にしても結局『時間がある人』もしくは『時間をどうにかやりくりする努力する人』に押し付けられるのだから。)

ただ、これを読んでいると自分の子供がいじめに遭わず、自殺しなくて本当に良かった。と心から思う。
もしこの本を子どもが中学生の時に読んでいたら不安で学校に干渉しすぎていたかもしれない。
違う意味で、こんな風に「今時のイジメ」を知らない親は子供の変化に気づくきっかけを見つけられないままわが子の命を失う事に繋がるかもしれない。

よく自殺した子どもの親が「いじめがあったのに学校は何もしてくれなかった」と言うが40人もの子供をそれも10分15分の短時間でどう観察しろ、と言うのだろう。
むしろ今後は「たった4~5人の家族構成なのにどうしてあなた方は親なのに子どもの変化に気が付かなかったのですか?」と反論される時代が来るかもしれない。


子どもが学校で見せる顔と家で見せる顔は違う事をもっと理解しておくべきだと思う。

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