武士道セブンティーン 誉田哲也著
2011年9月6日 読書
微妙に書く雰囲気が変わったような。
というか香織さんの性格というか剣道に対する考え方が変わったというべきか。
今回は早苗と香織の試合よりも現在の剣道における「問題点」をクローズアップしていると思った。
一つは「剣道の試合における審判のあいまいさ」。
これを今回初登場の「レナ」(全中に優勝。香織はこの子に負けて準優勝。香織的には「絶対私は負けていなかった!!」と)が
「剣道の高度競技化」というものを目指している。
ほんと、実際試合を見ていて素人には一体なんでこれがOKな面で、これがNGなのかさぱ~り。それどころか審判の「好き嫌い」で旗を揚げてもらえないことは日常茶飯事。のためそれが悔しければ「誰が見ても絶対に旗を揚げざるを得ない打突をすること」と
教えているらしい。(旦那談)
全中も例年「開催地校が勝つトーナメントを組み、審判も大甘」というパターン。
ゴールに入ったら、線の中だったら…と他のスポーツとは明らかに勝敗がはっきりしたものと違い「人の感覚」に頼った「あいまいな」ものに頼ったことであることに歯がゆく思うのは当然で。
レナの設定がお母さんがフェンシングのオリンピック選手ということからも「合理的」に剣道を捕えようとする。
そこに「武士道」=「生き方」は加味されない。
今回はその「スポーツ」としての剣道か「精神のあり方」かを
問う形にしているように思った。
その考え方のずれは「楽しい剣道」をしていた早苗に影響を及ぼす。
早苗が「楽しくない」と感じているのはレナのやり方だけでなく学校の剣道の取り組み方にも問題がある。
早苗はいわゆる「強豪校」に転入したわけだが
早苗にレギュラーの座を奪われた先輩が
そして剣道部だけでも部員が50人もいる場合は各試合に応じたメンバー編成をする。
親としてこれが一番つらかった問題かな。
一度も大きな試合に出してもらえずに終わるから。
本人は納得しているけど応援している親にしたら厳しい。
高校は各自自分の意志で私学に行ったりするから問題なけど、「越境問題」は公立の中学では「問題」によくなる項目の一つ。※1
一方香織は理想というべき行動をとっている。
それは「後輩を育てる」ということ。毎回2,3年生と言った実力もあり試合も毎回出る人間が「固定」されると上級生が卒業した後
経験値の少ない部員が出ることによりいい結果が出せない。
ので、今のうちに3年生や2年を外して経験値を踏ませて欲しい、と。
ここが今回の「香織の成長」だと思った。自分さえ勝てば、自分さえよければという考えから離れて「全体が勝つ」ことを考えるようになったことが。
「勝てばいい」の思想が蔓延すると当然部員間で争いが起こる。
早苗の部も3年と1,2年生が二つに分かれていさかいが起こる。
とまあ、こんな風に「考え方の違い」により楽しかったものもそう感じられなくなり「16歳」の時に香織が悩んだ「なぜ、剣道をしているのだろう」という悩みも早苗も悩むようになる。
結論としては早苗の顧問の一人がこんな風にまとめている。
この先生の「気持ち、考え」をどれだけの剣道をしている子供たちに教えているかは問題ですが。
個人的には早苗のように「楽しい、好き」で剣道やっている子が
悩んだ末「なぜ、やっているか」がわかり「続けていく意義を見つけた」子が強くなるような気がします。
というか香織さんの性格というか剣道に対する考え方が変わったというべきか。
今回は早苗と香織の試合よりも現在の剣道における「問題点」をクローズアップしていると思った。
一つは「剣道の試合における審判のあいまいさ」。
これを今回初登場の「レナ」(全中に優勝。香織はこの子に負けて準優勝。香織的には「絶対私は負けていなかった!!」と)が
「剣道の高度競技化」というものを目指している。
ほんと、実際試合を見ていて素人には一体なんでこれがOKな面で、これがNGなのかさぱ~り。それどころか審判の「好き嫌い」で旗を揚げてもらえないことは日常茶飯事。のためそれが悔しければ「誰が見ても絶対に旗を揚げざるを得ない打突をすること」と
教えているらしい。(旦那談)
全中も例年「開催地校が勝つトーナメントを組み、審判も大甘」というパターン。
ゴールに入ったら、線の中だったら…と他のスポーツとは明らかに勝敗がはっきりしたものと違い「人の感覚」に頼った「あいまいな」ものに頼ったことであることに歯がゆく思うのは当然で。
「私はね、竹刀が刀だったとかそういう曖昧な想像力で何かを補うよりも剣道は一本の基準をもっと明確にして反則もちゃんと試合中に理由を宣告して、競技としての完成度をあげていった方がいいと思う。
ルールが明確になれば今よりもっと一本の基準がはっきりすれば今までにない技や試合展開が必ず出てくる。
こういう打ち方って駄目かな。駄目なんやろなって先生の顔色
見て諦めていた技も、自分でルールブックを確認してOKだったら
自信をもって出すことができるやろ」
レナの設定がお母さんがフェンシングのオリンピック選手ということからも「合理的」に剣道を捕えようとする。
そこに「武士道」=「生き方」は加味されない。
今回はその「スポーツ」としての剣道か「精神のあり方」かを
問う形にしているように思った。
その考え方のずれは「楽しい剣道」をしていた早苗に影響を及ぼす。
私、最近剣道をやっていてつまらなくなっている。前みたいに楽しいって好きだなって思えなくなっている。
それだけが取り柄だったのに。たった一つの、大して強くもない私が剣道をやり続けている真っ当な理由だったのに。
早苗が「楽しくない」と感じているのはレナのやり方だけでなく学校の剣道の取り組み方にも問題がある。
早苗はいわゆる「強豪校」に転入したわけだが
早苗にレギュラーの座を奪われた先輩が
「あんたもこれから徐々にわかってくると思うけど…この学校、試合に勝つためなら何でもやるから気を付けた方がいいよ。集めるだけ集めといて、使えるうちはバンバン使って勝てなくなったら放り出す。もっといいのが入ったらお払い箱。
壊れて潰れるのは自己責任。転校するならご自由に…
ここってそういう学校やねん。別に剣道に限った話やなく、
野球もサッカーも柔道もどこの部も一緒やけどな。」
そして剣道部だけでも部員が50人もいる場合は各試合に応じたメンバー編成をする。
「孝子先生は割と三年生中心でやっていきたいねん。もちろん最初に実力を平等に評価したうえで。でも、限りある高校生活だからなるだけ三年生にクライマックスを味あわせてあげたい、みたいな…
でも、城ノ内や学校のもっと上の人間は違う。
完全実力主義っていうか、成績重視の結果主義。
しかも派手で目立つのが大好き…タレント性も評価基準の一つみたいな。新聞に載ったとか雑誌に出たとか、めっちゃ気にするやろあいつら」
親としてこれが一番つらかった問題かな。
一度も大きな試合に出してもらえずに終わるから。
本人は納得しているけど応援している親にしたら厳しい。
学校の名前をアピールするために無理やり集められた兵士たち。
寄せ集めのよそ者軍団。
プロ野球だとよくあることなんじゃないかな。
お父さん言ってた。巨人は嫌いだ。大金使って、他のチームから四番バッターばかり引き抜いてくるからって。」
高校は各自自分の意志で私学に行ったりするから問題なけど、「越境問題」は公立の中学では「問題」によくなる項目の一つ。※1
一方香織は理想というべき行動をとっている。
それは「後輩を育てる」ということ。毎回2,3年生と言った実力もあり試合も毎回出る人間が「固定」されると上級生が卒業した後
経験値の少ない部員が出ることによりいい結果が出せない。
ので、今のうちに3年生や2年を外して経験値を踏ませて欲しい、と。
ここが今回の「香織の成長」だと思った。自分さえ勝てば、自分さえよければという考えから離れて「全体が勝つ」ことを考えるようになったことが。
「勝てばいい」の思想が蔓延すると当然部員間で争いが起こる。
早苗の部も3年と1,2年生が二つに分かれていさかいが起こる。
「この部はどうなっているのか?って思うはず。
目標は勝つこと、目標は選手に選ばれること、頭にあるのは次の査定試合の事。そんな考えだけで剣道するの、私は好かん!!」
どっちにしてもなんか受験勉強みたいだよ。
この部の稽古って。試合試合ってそればっかり。
大きな大会は無くても、部内では月例の査定試合がある。
他の班との試合も。他校との練習試合もしょっちゅうある。
毎週末に模擬試験がある、予備校となんにも変らない。
それでみんなは何に合格しようとしているの。
とまあ、こんな風に「考え方の違い」により楽しかったものもそう感じられなくなり「16歳」の時に香織が悩んだ「なぜ、剣道をしているのだろう」という悩みも早苗も悩むようになる。
結論としては早苗の顧問の一人がこんな風にまとめている。
剣道はどこまでいっても…路上でやっても、防具が無くても、心に武士道があれば、武道たい。
暴力に成り下がってはいけんし、暴力に屈してもいけん。
剣道は、武道は、武士道は、相手の戦闘能力を奪い、
戦いを納める。そこが終着点たい。
相手の命も、自分の命と等しい、たった一つの命…。
さらに言えば、試合や稽古で相手をしてくれるのは敵ではなか。
常に、同じ道を歩む、同志たい。
やけん礼に始まり、礼に終わる。そういうこったい。」
「確かに現代の剣道には競技の側面がある。ルールを整備し、それを有効活用していかんかったらやがて日本が外国勢に個人でも団体でも負けるひがくるやろう。
…ばってん、剣道は斬り合いや殺し合いの為にある技ではなか。
お前たちの剣道は、だれも殺さんで済むように、誰一人傷つけんですむように、そういう社会を築いていくために、生まれてきた技たい。少なくとも俺はそう思っとる」(注:先生は九州弁)
この先生の「気持ち、考え」をどれだけの剣道をしている子供たちに教えているかは問題ですが。
個人的には早苗のように「楽しい、好き」で剣道やっている子が
悩んだ末「なぜ、やっているか」がわかり「続けていく意義を見つけた」子が強くなるような気がします。
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