作者の経歴が「勤務医」から「独立行政法人放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター・Ai情報研究推進室 室長」に変わったのがなんとも。
「これだけ医学と関係ない分野でAi、Aiと騒ぎまくったから関係部署も目をつぶれなくなったのか?」と邪推してもいいですか?

さて、本書を読む前に『螺鈿迷宮』を読んでおくことをお勧めします。
「螺鈿」は田口医師が端役で出る程度でしたが、本書を読む限り本流の「イノセント…」がサブテキストで「螺鈿」が本家かと。
「アリアドネ」にいきなり「螺鈿」の主要人物が復活してますから。
しかも流れが「将軍」も北に飛ばされたなあ…「螺鈿」で謎の人物も「北」に逃れたなあ…方向が一緒だなあ…と思いながら読み終わったら「アリアドネ」でつながるという仕掛け。

もっといえば「ジーンワルツ」で人工授精にて双子を生んだ50代の女性と「螺鈿」にかかわった人物が同じマンションでニアミスしているし。
全く違うシリーズの人物がさり気にリンク、ニアミスしている仕掛けに気づくと
登場人物の動きも頭に入れつつ、なおかつ読む順番が違うと気が付かずに流してしまう作りに。

「バチスタ」を書いた時点でここまで物語が広がることを想定していたんだろうか?とそちらが気になる。
最終的には白鳥&田口シリーズと「ジーン」シリーズも一本の流れとなるべく合流するんだろうか?

さて本書の感想と言えば…
「ここまで司法を敵に回さなくても…」というのが本音。
今まで医療の「事実」を書き散らかして訴えてきただけに、ここに書かれた「司法の在り方」がすべて「事実」だと思われないのか?不安。
もしかしたら「事実」なのかもしれないが「殺人課」もどきがあるのかと思うと背筋が凍る。
一方、現実の世界でも「村木局長」の事もあるし「司法がすべて正しい」という世界は終わりを告げようとしているのかもしれない。

でも、知り合いの警察官に「あれも取り締まれ、これも取り締まれ」と言いたい放題言ったことがあるのだが彼に言わせたら

できるものならしている。
それを取り締まる法律がないからどうしようもない。
」と
返されてしまった。
明治にできた法律で平成の世の中を裁くことはだれが考えてもおかしいのだが、
それを放置し続けているのが「官僚」なのではないだろうか?
「前例がない」ことを理由に乗らりくらり、自分たちにとって都合のいいことだけを推し進めているという姿勢は医療の推進の阻害にしても警察の活動にしても根っこは同じではないのか?と思う。

海堂先生も警察を敵視するよりももっと違う方面をただすべきではないか?と思う。医者だけでなく警察官だって「現場と上の考え方の違いに苦しめられている」のだから。本書だけを丸呑みする 浅はか、公務員バッシング大好き人間知識の少ない人間の方が世の中多いのだから、医者の目から見た者だけでなく警察から見た医療の立場の本を書くのが筋ではないか?
喧嘩における片方 だけの都合のいい言い分を聞かされている気になった。
ちょっと子供っぽいものの考え方をする人だな

初めの頃はこの作者の事を「いい」と書いたけれど、ここまで「偏った」物を書く作家もどうかと思う。
娯楽と事実を100%切り離して考えることができる人が読者でない限り、危険だと思う。

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