ラノベもどきの装丁ですが、ルポです。
こうでもしないと興味をひかないだろう、と言う戦略でしょうか?
さて、ド素人が「予備自衛官補」=ヨビジホ=普段は学生や社会人をしていても災害、戦争などの有事の時に自衛官に変身する人たちです。
それになるためには試験(国語、数学、理科、社会、英語、作文)までみっちりありまずそれに受からないと訓練すら受けれないという…
筆者は中退とはいえ同志社大学に通っていたので数学だけはできる!!と捨て身の攻撃で見事採用されますが、合格後周囲に聞いて回ってもみんな「なぜあの試験で受かったのか不思議…」と採用基準が摩訶不思議だったそう。
で、素人とはいえ、筆者はフリーライター。
体験が見事「飯のタネ」になるうらやましい身分。(とはいえ、この企画が採用されなかったら…と言う結果もありうるのですが)

私も読み始めは「へ~おもしろそう。そんな制度があるのか~」と思ったのですが、読んでいるといくらヨビジホとはいえ訓練は訓練。
過酷です…
あ~~~無理無理無理~~~~体力無いわ~~
でも、本自衛官はこれの倍以上の訓練(ヨビジホが10キロ、25キロ「行進」する=当然銃やあの重たいリュックみたいなのを背負って)は「徹夜で22時間かけて60キロ」と元気に返答されたというくだりには「…」。
個人装備30キロ+機関銃、ロケット発射筒、無反動砲←これ、なに??も携帯して行進するとか。さらに追い打ちのごとく「演習場まで行進して、着いたらそのまま現地で攻撃訓練やるのよ!」

すごい!すごすぎます!
しかも返答しているの女性ですから…
彼らが被災地で黙々と動いているのはこんな訓練のたまものなのか!!
もっとこの地道な訓練を世にアピールしてもいいのではないのか!!

実際、訓練を受けた著者も心境の変化があったのか(または意図しているのかもしれないが)
文体がね、冒頭は超かる~~~~~~~~~いラノベもどきだったのが、
中盤あたりからぐ~~~~~っとまじめになり、
あとがきに至っては「さすが中退とはいえ、同志社!!」ってぐらいきれいにまじめにまとめてくれてます。
この文体の変化がもう、この自衛隊で学んだことをきれ~~に表現しているなあ~~と感じました。
実際、冒頭、あまりにも軽くて読みづらかったんで途中放棄を考えたほど。

で、できることなら大学で夏休みに短期講習としてこの訓練に参加させるような試みをしてほしいな、と。
別に「軍隊万歳!」と言ったものではなく「共同生活」とか「自分は何の為に」と言った深く考えるきっかけになりそうな体験になりそうだな、と。
まあ、本文でも教授に言われて参加したけどな~~ンにも身に付かずに「次回は来ません」と言い放つヤツもいたそうだけど。
ああ、コイツ人生においてもったいないことするヤツだなあ…と。

まず

「言われたことを、言われたとおりに、やる」
これが基本。基本と言うより、これのみ

簡単そうで、なかなかできません。



「自衛隊ではバカになれ。自分では何も考えるな。
何も考えずに、言われたことをやれ。
走れと言われたら走る。声を出せと言われたら大声を出す。飯を食えと言われたら飯を食う。
バカになって走って、声出して、飯を食え」

訓練3日目には「バカになる」ことがとても楽しくなってきました。

学校や家庭でこまごまとした指示はたくさん受けましたが、
それは同時に自主性やら中途半端な個性やらも求められて、
純粋な「言われたことを言われたとおりにやる」は求められていませんでした。

しかしここは違います。自衛隊は違います。
「言われたことを言われたとおりにやる」の度が違います。
そういう意味では、生まれて初めて
「教育を受けている」と言う実感を持ちました。

     ↑
これかな、学校にこれをとりいれたらどうか?と思った理由。
言い換えれば「洗脳」でもあるのですが、戦場で余計なことを考えていたら命がいくつあっても足りないので余計なことを考えるという習慣を捨てさせ、ただ上官の指示のみに従うことが基本となる。
もう、根本の思想がというか背景が違うなあ、と。

あとがきが深い~と思った部分は、訓練初日言われた
「この中で、人の命が地球より重いと思う者?」と問われ約80人のうち半分程度の手が上がりました。(中略)
しかし、次の大隊長の言葉でそののんきさが一気に吹き飛びました。


「人の命は地球より重いと言われるが、我々自衛官には命よりも重いものがある。それは

国民を守るという使命感だ。」


今や警察も不祥事の連続であてにならない組織に堕ちましたが、このくだりを読んだ時「自衛隊」が日本の最後の砦特に精神の砦なんじゃないのかな?と。
偏った思想で「軍隊」を持つことは危険ですが、自分の命より守るべきものがるという思想をたたきこんで行動させているというのは本当に素晴らしいことではないでしょうか?


自分の命よりも大切なもの、と言うのはなかなか見つからないもので、みんな一生をかけてそれを探したり、見つからないまま一生を終えたりします。
しかし、自衛隊ではそのなかなか見つからない「大切なもの」を私に与えてくれました。
しかもそれが「国民を守る使命感」と言う大きなもの。
こんな嬉しいことはありません。
国民を守る、そのために受ける訓練。
国民の為に存在する、自分


まあ、単純であればあるほど、思想に染まりやすいのですが。
それでも単純に「大切なものを持っている人は強い」と思いませんか?

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