『チェーンポイズン』が自分的にはイマイチだったので、きちんとデビュー作から時系列的に読んでみることにしました。これはデビュー作を収録した短編集。
テーマは「死と喪失」かな?どちらかと言えば幻想的な死。

眠りの海…94年
祈灯…95年
蝉の証…96年
瑠璃…97年
彼の棲む場所…98年

全体的に文体が「古い」のはこの初出の年数から見ても仕方ない。
特に『眠りの海』は高校が舞台で教師がこんなことを思っている。
今の時代、高校生の娘の修学旅行代すら出せないほど切迫した家庭と言うのも考えにくい。

いやいや、修学旅行代どころか給食費も出さない時代ですがな。
さすがバブルが崩壊したとはいえ、今ほどひどくない時代の感想描写だな、と。
さらに高校生がバイトしている描写で
「まだ未成年だろ。夜中に働けるのか?」
「世の中人手不足は深刻だそうです。」

今の時代、高校生どころか成人でも深夜だろうがファミレスならバイト殺到するのにねえ…
人手不足…まあなんて素敵な響き!

後不思議なのが「瑠璃」の描写で
皺くちゃの顔の中のぱっちりした目が、深い海みたいに濃い紺色だったから。それはびっくりするぐらい綺麗な紺色だったの。

え~~と。日本人の赤ん坊の目の色は「紺色」なんですか?
てっきりハーフの子なのか?と思いつつ読んでいたけど最後まで日本人の両親だったんだけど。
深い濃い紺色…謎…

全体的にに幻想的で透明感のある文体。
でも、まだ未完成かな?
「で?」と思わなくもなかったから。
とはいえ、今の漫画の原作?と思うような単純な描写になれつつある身にとっては古いのだけれど新鮮。

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