解夏(げげ)
秋桜(あきざくら)
水底の村
サクラサク

の4編からなる一冊。
日本人なら(というか心ある人なら)全体を通して流れる「情」「子を思う気持ち」「おもいやり」と言ったものを感じて涙するのでは?

『解夏』
視力を失う病気にかかった主人公。
『眼を食い終わったら完治する』それだけですよ

解夏の前には「結夏(けっか)」がある。
庵に集まり、共同生活をしながら座禅三昧で過ごす。この行(ぎょう)が解ける日を解夏 という。
主人公にとって病に侵された日が「結夏」
視力を失う恐怖と戦う日々が「行」
そして「何も見えなくなる日」が晴れて「解夏」となる…
残酷な話なのだけれど、でもどこか仏教的で救われる。
たとえ見えなくなっても、それは「解放される瞬間」なのだから…

『秋桜』
異国から来た嫁を一番かわいがり受け入れたそして「護った」のが義父。
義父の優しさ思いやりがじ~んとくる。
ただ、急に義母の態度が一転したその過程がイマイチ。

『水底の村』
妊娠した幼馴染が失踪、その12年後に再会したのだが、まるで男のが一方的に悪いみたいな書き方がよくわからなかった。
堕胎を決心し失踪したのは女の方なのだから。
この後登場人物たちは一体どうなったかは読み手にゆだねられる。
でも、多分、ハッピーエンド。

『サクラサク』
緩やかに「壊れて」いく父…
完全に壊れる前に少しでも子に何かを伝えて残したい…そんな思いをひしひしと感じさせられてうるうるの一冊。(人によっては「狙っている」と評するかもしれないけど。この手のうるうるは好きです)

ここに書かれた「父」や「義父」の言葉以外で子に伝えるという手段。
自分の親に当てはめたら「ありえね~」なので、うらやましい。
あの人たちが「言葉」で「態度」で何を教えてくれたというんだろう?
70も過ぎて相変わらずトラブルをこちらに押し付けるだけ。
いやになる。


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