読み始めて数行目で「あれ。私なんでこの本を予約したんだっけ??」と。
作者名を見てもピンと来なくて。まるで差出人に心当たりがない手紙を受け取ったような…って感じで。なので、裏側にひっくり返してプロフィール確認後
やっと「あ、『真夜中のパン屋さん』の作者でしたか。ああ、それ繋がりね」とやっと納得して読み直しだしたという感じ。

トモミさんの描写にて「あれ、誰かこんな感じの人知ってる…」と「誰だっけ?誰だっけ?」と引っかかりつつ読み進めるうちに矢崎さんの『ぶたぶたさん』に
感じが似ているのを思い出した。まあぶたぶたさんは問答無用で人を投げ飛ばすような軽はずみな行動は取りませんけどね。でも、壮年のいい男、って感じ(料理OK!編み物Ok)は似ていると思う。

さて、主人公。
めっちゃ嫌いなタイプ でして、正直苦痛でした。
無色透明、自己主張無し、いるかいないかわからない。顔を思い出せと言われても無理、て感じ。髪型と言うか雰囲気も『ちび×る子ちゃん』風な黒髪におかっぱ。ボブカットみたいなおしゃれじゃなく、不思議ちゃん系でもなく伸びたから自分で切った、そんなのが似合う系。
無職の私が言えた義理じゃないけど、主人公は求職中=濡れ衣で横領を疑われ社長に「辞表を書け!」と言われた挙句、内定がもらえそうになると「在社確認」でぼろくそに社長に悪口を言われて「残念ながら…」と言われる羽目にず~~~~~っとなっている。
そもそもしてもいないことに説明をす努力もせず(その場から逃げたかったという理由)自分の将来に対して邪魔をしている相手に立ち向かいもせず…とイライラしっぱなし。この子、アホ ?と。中学生や高校生じゃあるまいし、34歳の女がそんな「人ごと全開」意識でどうするんだ?って感じ。
面接官が「じゃ、ボール打ちますからね~取ってくださいね~」と言ったら主人公は「自分の横を何がが横切った気がする…」みたいにどこまでも傍観者。
例えばこれが採用されそうな例として、クールに取って、投げ返すときに小技を効かせ「これ位なら簡単にできますよ」とアピールするでもなく、若くてリクールートスーツ(それもスカート)でパンプスでも飛びついて必死に取ってでもこけちゃった、テヘぺロなんて子が評価されるとされると思うんだけどなあ…
そんな「必死感」もなくただ流れている、漂って感がどうしても受け入れられなかった。いまどきの30代ってこうなの?って感じ。
ただそれはかなりデフォルメ描写であるらしく、何度目かの面接にこう言われる。

滔々と語り続ける彼を前に私は、そうですか、だとか、なるほど、などと適当に相槌を打っていた。それにしても一体何が言いたいんだという気がしないでもなかった。
「ですから、なんといいますか。ポジティブな空気を感じさせる人材というのは、どうしたって得ですよね。
ああ、この人間とはうまくやっていけそうだとか、一緒に仕事をしてみたい、だとか。そういう単純な印象で、採用を決めることも多いんです。」
彼は私を目でとらえたまま口元をじんわりと歪めた。
「永瀬さんは一見すると明るそうだ。はきはきしていらっしゃるし、感じもいい」
「しかしどこか、装っている感じがしてしまう。本音が見えない。本当は何を考えているのかわからない。だからなのか、見えない壁のようなものを感じてしまう。」

作者が意図して主人公をこの設定にしたのだから、私がそう感じてもおかしくないってことか。

作品全体の感想としては、いい線行ってんだけどどこかラストも含めておしいなあ…という感じ。
トモミさんと言うキャラ設定を含め「謎」が多く残っていてすっきり感が無いからかもしれない。残念。(続編に続く、ってことならこれでもOKだけどね)

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