オキシペタルムの庭 瀧羽麻子著
2013年11月17日 読書私たちには呪いがかかっている。
幸せにならきゃいけないって言う呪いが。
結婚しなきゃいけない、
結婚するなら良い相手じゃなきゃいけない。
子どもはやっぱり産まなきゃいけない。
その子を立派に育て上げなきゃいけない。
今時誰もそんな事を口に出しはしない。
それでもやっぱり、皆、恐れている。
王道から外れることを。
まず一番に感じたのが「文体(雰囲気)が変わったな」ということ。
今までの2作に比べて乙女感たっぷりのふわふわ感は無くなり、
じっくりと「大人」の小説に取り組んでみました!って感じで。
先に読んだ『白雪堂』の時にも感じましたが私の好きな唯川さんと似た流れだな=仕事や結婚で悩む世代の描写、だなと。
私たち40代は「仕事か結婚か」の二者択一しか選択肢が無かったのに比べ
今の30代は「仕事も結婚もその他好きなことはできるだけしたい!」
「正社員にもなれずとも好きな事を好きなようにやりたい!」と言う意識が
強いようで。まあ、それは『白雪堂』のマダムの「あなた達は欲張りよ」と言う
意見と私は一致するんですが。
その一方で専業主婦になって旦那さん任せの人生も送りたい…って…
そんな風に「結婚」にあこがれていた主人公(派遣社員)が彼氏にプロポーズされて結婚も秒読み…と言う展開の後ネタばれですが彼が宗教の様な自己啓発セミナーに通っているという事がわかり「彼の下した結論は人に言われて下したもの?それとも自分の意志で?」と疑い始めた時から二人の関係が微妙になっていく…という話。
ぶっちゃけですが、そんなに相手の事を疑っていたら一生結婚なんぞできませんぜ、って感じですかね。
というか、なぜ疑問に思うのなら逃げずに別れること覚悟で相手にぶつかる(話し合う)事をしないんですかね?
嫌な事から目をそらしすぎ、逃げすぎですぜお嬢さん。
ちょっと読んでいて主人公の行動にイラッとしたのも事実、
33歳と言うビミョーな年齢でそろそろ「妥協」することも身に着けてはどうでしょうか?って感じでしたね。
29歳の時に相手から一方的に別れを切り出された過去をがあったのに学習していないし。
本人は気が付いていない「潔癖症」をどうにかしないと今後楽しい人生は送れないと思いますが。
完璧な人なんてこの世には一人としていない、そう考えたら視野も広がるのにねえ…と言った人生のアドバイスをしてくれる人が周囲にいないのかな?
今時の30代。
自分たちと言うか同じレベルで固まるから似たような意見しか聞けないし、視野も広がらない。で、結局「ま、いっか」って流されていく…
有益なアドバイスもヒステリックに受け取ってしまい、助言した方も気詰まりになって疎遠になる…と言うパターンもよくあること。
主人公が務める職場に「おばさん」がいておせっかいなアドバイスをしてくれるような環境であれば少しは違うんだろうけど。
と、今時の職場の偏り具合がこんな風に悩める30代を迷わすんだろうねえ…
先の2冊を読んだ後でこの本を読むと「なんか重たくて、暗い」と言った感想をもちそうだし、逆にこの本を最初に読んで後の2冊を読んだら「軽くて底が浅い」と評価が真っ二つに分かれそうな変身ぶり。
ちなみに題名の「オキシペタルム」とは花の名前で花言葉は「信じあう心」。
ラストはなんか気持ち的にすっきりしなかった(甘えを感じる)けど、
ま、他人の人生なんでこれ以上言うのはね、ってことで。←と、切って捨てられても仕方ないような矛盾した心理&行動を取る子だな、と。
「ああ、これ以上この子に何を言っても無駄」みたいな。多いよね、今時の子。
と、辛口感想でしたが今までこの人の本を読んだ3冊の内、一番読み応えの有った一冊。
ま、私なら大阪まで追いかけて行って「復縁」を迫ると思いますがね。笑
それをしようともかけらも思わないほど今の子ドライなのかな????
(住所がわからなくても大阪セミナーに行けば捕まえられるしね)
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