帯に「青春暗黒小説」とあります。
暗黒、ですよ。
まさに暗黒と言うか残酷と言うか…

山田なぎさ
海野藻屑(うみの もくず)
と言う二人の少女が出てきます。
娘に「藻屑」と言う名前を付けるセンスからして…
少女の一人は殺されます。
毎日に及ぶ虐待の末、バラバラにされて殺されます。
自分の父親に

なんという絶望感のある設定…

本作も中学生が主人公ですがこういった中高生を主人公にした小説で
最近思うのは 子供たちは絶対に親や大人に助けを求めない のが主流になりつつある気がします。
少女の一人が虐待されていると電話で情報が回っているのに「あんた知ってた?」とまるで無関心の親に聞かれて言葉を失くす少女。
そりゃ、助けを求めないよね。
健全な親子関係だったら友達が暴力を振るわれていてその物音が道の
外まで聞こえてきたら親に「××を助けて!!!!あのままだと殺される!!」って言いませんか?私、そこの描写が納得いかないというか今時なんだろうか?と思ったり。
いつの間に親はこんな風に頼りにされない存在になり下がったのだろう?
最初に発行されたのが平成16年だからかもしれませんが今なら虐待に対して
警察に通報する義務があるのに。
見て見振り。
中学生が大人になる為に、生き残るのがそんなに難しい時代なのか…と。
自分を守る為にさまざまな「弾」を持ち、防御しなければならない大変さ。
生きるってこんなに難しい事だったのか?と。(特に今の子は)

「あざ」を「汚染」と言い換えたり、嘘をつき続けなれければ
自分の身に起こっていることを認めたくない少女の生きる辛さ。

愛情表現と憎しみの区別がつかない
という事は言い換えればきちんとした正しいものを親から与えられなかったということ。
この子がどんな気持ちで自分の親に殺されて行ったかのかと思うと小説ながら
不憫でしょうがなかった。
今までの桜庭作品は私的にはダメでしたが、この作品だけは不思議な存在として印象に残った。
これは小説ですが、この子と同様な運命を背負わされて生きることを断たれた子供たちが生まれかわって今度こそ愛情深い両親に育てられることを心から祈る。

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