兄…逸騎(イッキ)
私…丹華(ニケ)
妹…燦空(サンク)

読み始めていきなり「きっつううううううううううう~~~」と。
少女のべったべたの「神戸弁」のモノローグ。それも生粋の。
チョコレートのあまいがいんと、ふんわり焼けるパンのキツネいろ。
じゅうじゅう、おとがしとぉよ。やきそばを、やくおとや。

一定の独特のイントネーションとそのニュアンス。それをきれいに再現されたら…
そして、内容は「阪神大震災」の朝から始まる…
少女の平和であったか~い一日は…
読んでいて涙が出る。思い出して、泣けてしまう。

実際「もし重機があったなら」「もし、水が出ていれば…」そんな後悔を残された人々の心に残さずに済んだのに。
がれきに足や体を挟まれて「助けてくれ!」と叫んでいた人が、次第に近寄ってくる火を前に「もういい。お前たちだけでも助かってくれ」という言葉だけを残したのは事実。
どうすることもできなかった。何もできなかった。
そんなくやしさを表現してくれた一冊。
ただ、いくら少女の心の成長を表す表現として「羽」はちょっと…
涙が引っ込んじゃったよ。
できたらこんなファンタジーにせず、もっと大人の小説として完成させてほしかった。

震災一か月後に訪れたあの真っ暗でこの世とは思えない現実を見せられた者にとっては。
たった車で1時間。その差がこれほどまで平和で幸せであるかを思い知らされたあの恐ろしいまでの暗闇。
一刻も早く自分の家に「帰りたい!!」とどんなに強く願ったことか。
違う、違う、ここは私がいたあの町じゃない!!!!!!!!
蛇口をひねれば当たり前のように水が出てトイレができる幸せ。
当たり前だと思っていた生活。それが…
失い、絶望し、それでも立ち上がった人たち。
狭い路地、懐かしい匂いをすべて失い、表面的にはきれいで大きな道にそして町になったけれどもうそこには自分の故郷は、無い。


そういえば、最近小学校時代の友人を捜す夢を見なくなったな…



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