昨日『猫弁と指輪物語』で猫弁事、百瀬太郎がいかに結婚に向いていないかを酷評いたしました。(建物物件に例えたら過去殺人事件の起こった物件or幽霊が出る物件など。)
今回の話を読む限りはそれは作者の意図したものであることが判明。

P97 大福さんの母親の気持ち、抜粋
東大卒であることも弁護士であることも決め手にはならない。
しかし、両親がいないことも、パッとしない見た目も、マイナスとは思えない。
誠実であることは美徳だし、その点は全く問題なさそうだ。
しかし母として、何よりも強く婿に望むことは、娘を深く愛していること。
この一点である。
多少社会規範から外れていようが、収入が低かろうが、娘を唯一無二の存在として愛し、
がむしゃらに外敵から守ってくれる。これこそが婿に望む第一条件である。
亜子への愛。
その肝心なものが百瀬太郎には足らない気がして、敏江は心配だ。


そして、肝心の百瀬もP207
「結婚したかったけど、やめた方がいいかもしれないって思い始めている」
「どうして?」
「私の思考は散らかっていて、身近な人を傷つける。家族ってものがわかっていないし、
相手を幸せにできるかどうか」


本作、前作とは少し毛色が変わったというか作者の欲みたいな色気が投入されて
一作目のどちらかと言えばほんわかエンタメ系だったのが売りだったのが
子供、特に現代の子供を投入することにより社会問題も取り上げた少し硬派系を
目指したのかもしれないけど、そうすることによって良さが弱まった気がする。
今の子供を作中に入れたら、母子家庭は当然のこと、父子家庭はては子供を放置して出奔する母親像がゴロゴロ…父親は良くて仕事漬けで子供を見守らず、下手すりゃ酒飲んで子供に暴力を奮ってご飯を与えない…的な描写ばかりが一般的。
読んでいて胸糞わる~くなる。ので、子供をこういった小説やドラマで描くのはなんかなあ…と思うのが正直な気持ち。
なのでお気楽エンタメで始まったのなら最後までお気楽テイストで貫いてほしかった。
今回何やら盗聴器を仕掛けるや母親の過去についても語られるなど、微妙にぼかしてあった百瀬の過去にもつながる伏線が多数。
盗聴器などあまり穏やかではない進展が予想されるだけに、読み手としては最初のテイストはもう無理かなあ…と。
がっかりさせられない展開を心から望みます。

さて、本文でこんなことが書かれていました。
P239 大福さんの後輩の晴美が大福さんとこんな会話を。
「私、お見合いをしたその日の夜に三千代さんに電話したんです」
「三千代さんに?」
「ええ、あの人大きな会社を作った超パワフルウーマンでしょ?私にとっては
希望の星なんですよ。起業家の精神論とか考える秘訣を学ぼうと思って、
時々電話しているんですけどね、見合いをしたと言ったら、即、結婚してみろって言うんです」
「三千代さんが?」
「しかもこう言うんです。もし相手に経済力があるのなら、専業主婦をやってごらんって。
いいか、専業主婦ってのは頭を使う職業だ。バランス感覚や忍耐力もいる。
ほかのことは考えず、まずは三年、修行と思ってやってご覧。
見事に平和な家庭を維持できたら、起業家としての素質十分、
その時私が生きていたら、専属アドバイザーになってやろうって言ったんです」


少なくとも、私がリンクしていただいている方々は全員、起業家としてやっていける方ばかりと言うことで。笑

こうやって専業主婦にさりげなくエールを送ってもらえる文章に出会うとうれしくなります。

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