この本を読むきっかけになったのが先日(と言っても8月上旬)読んだ
『珈琲店タレーランの事件簿』のレビュー等に『ビブリア』と比較されているが全然違う!的なことが書かれていたので「じゃ、実際はどうよ?」と言う興味から。

結果としては『ビブリア』に軍配を上げる。笑
2作ともコーヒーのうんちくと小説(古本)のうんちくを織り交ぜているので「似ている」と言う扱いを受けてしまうんだろうけど、絶対こっちの方が人物のつくりが上手い。
「珈琲」はどこかで読んだ本のコピペと言うか本当は人間と付き合ったことない人間が
頭だけで書いているような印象。なので人が真剣に出した結論を即座に「違います」と切って捨てるようなヒロインが誕生してしまう。
反対にこちらは私ぐらいの年代の人が書いたのか?と調べると1970年生まれとのこと。
文中に「松田優作主演の『それから』を見た、とあるので。私も見ましたもん。美和子ちゃんの独特な雰囲気とゆったりとした女性らしいあの時代の喋り方。
女性はやっぱりゆったりと丁寧な女言葉でしゃべる方が色気がある、とあの作品を見て思いましたから。と、世代的に重なるものがあったから余計に共感できたのかもしれませんが、やっぱり大学生の時に器用に書いた文章より、30.40と生きてきて身に着けた人間関係の機微が至る所にちりばめられている本書の方が深みがあると思う。

例えば、大切にしていた一冊の本を売ることになった夫に対して「絶対に売るはずがない。その理由が知りたい」と一見「おばか」な妻が買い取りを拒否する話で
理由を聞いた妻が一言「じゃ、私が読んで聞かせてあげるよ」と言うくだりは
人を愛したことのある人しか書けないと思う。これを20歳そこらの頭のいいガキがこの
夫婦の機微をかけるわけないじゃん。本人、きっと真面目な恋愛したことないだろうし。

ところで本書内で「本の虫ってのは同類を好きなるもんだ」と言う一説がありまして
悲しいことに夫は本、読まない人。自分の趣味に関するものは読んでも普段、全く違うジャンルに手を伸ばすことは無い。漫画もアニメも。
一方、私はスポーツをしない人間だから相手から見たら面白みのない人間なのだろうな。
まあ、お互いそれこそジャンルが違うからバッティングしない共存関係が築けるのかもしれないけど。
確かに自分の興味のある内容を飽きずに聞いてくれる存在が居たら大切に思ってしまうだろうなあ…

てなわけで、ラノベ分類されているにしては装丁を変えて何気ない風を装ったら
一般小説として十分やっていけると思うのですが。
それこそ一般小説なのに大学が一流だとか医者だとか内容以外のポイントで興味を持たせる商法も存在していますもんね。

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