久しぶりの宮部。しかもぶっといのが3冊!
さて、第一部。正直「だるいな~展開、遅!」って感じで途中放棄が頭によぎるほど。
やっぱり宮部も年取ったな~あの『火車』とかの勢いはもう期待できないのかな?と。
で、騙し騙し(?)読んでいくうちにだんだん人がポンポコ事故か自殺かわからないうちに死んでいく急展開に引き込まれていく。
そもそも本書登場人物に「善人」はいない模様。しいて言えば中学生の主要人物の父親が警察官なので当てはまらないように別枠ですが(この人までが女作ったり汚職に絡んでいたり…なんて設定にしたら収集つかないもんね~)、優等生の娘ですら第一の「事件」の
登校拒否していた男子生徒の「死」に対しても冷淡。
でも、ものすご~くわかる。今の今までその存在を「なかったこと」にして接してきたのに
死んだ途端に泣いたり、悲しんだりできる女子生徒の存在って超うざい。
無視してきたのなら最後の最後まで無関心で通せ!そんな気持ちになる。でも、実際は
特に中学生だと「人の目」が気になるからいかにも悲しんだ「振り」を演じなくてはならない。
涙なんて出ないから下を向いてやり過ごすしかない。これって冷たいのではなくある意味「大人」の対処法なんだけど。
むしろ本人は「自分は冷たいんだろうか?」と悩んでいるけどいやいやそれでいいんですよ。そんなもんですよ。ただそれは「大人」になってからわかるんだけど。
担任の先生も若くてきれいなことを鼻にかけている、嫌いな生徒とは接触を断っていると
いかにも今風な性格設定を与えられている。
「ああ、終わった終わった。午後から何をしよう?」そんな風に教師と言う仕事をどこか
機械的にこなしているそんな人物。おかげで隣人に嫌われて嫌がらせをされ退職に追い込まれるという…そんなに嫌われやすい性格ならそれ以前に気が付くというか似たようなことがあってもおかしくないと思うんだけどなあ…ま、いっか。

というわけで、全体に「日常に潜む悪意」でおおわれていますが、これ宮部のライフワーク的なテーマになりつつあるのだろうか?
ドラマ化した(一回も見てないし、原作も読んでないが)「ぺテロの葬列」といい
このシリーズはもともと「日常の悪意=毒」から始まっているし。
そして小学生を主人公にしつつも読後感が超悪かった「英雄の書」にしても
一見「あどけない」と思われている「こども」の「闇」にスポットを当てている。
大人は「子供は無邪気」と思い込みたいけど、もう昔の子供と違ってどんどん陰険、陰湿な化け物に変貌している。大人はそれを認めたくないだけ。見ないようにしているだけ。
だから、子供が不祥事を起こしても「うちの子に限って」とか「学校が悪い」と責任転嫁して子供と向き合うことを拒否する。これは、もう今では「当たり前」のようになってしまっている。

ところで本書、微妙に時間的ずれというか歴史背景にズレを感じてしまうのだが。
と言うのも、もともと「2002年10月号から2006年7月号」雑誌掲載されたものが
2012年8月にめでたく刊行されている。
書いて、10年後に書籍化ですか…汗
まあ、後2冊ぶっといのが控えているから当然か。
で、本書の時系列として最初に死んだ男子生徒の兄が
P126
柏木宏之は1972年5月に生まれた。
4歳年下の卓也も同じ病院で生まれた。

P147
端からは、それは高校三年生の青年の仕草ではなく…


1972+18(として)=1990年のことを書いていることになる。
確かにバブル前の好景気についても触れているんだけど、どこかバブル後の不景気の親のあり方(忙しくて子供にかまけていられない。特に母親が子供に興味を持たずに放任しまくっている)そんなバブル後に思えてならない。
「シメる」とか親が学校にのりこんでくるとか、それは今現在なら「当たり前、普通の出来事」と言えるんだけどその当時まだ「学校は聖域」「先生は尊敬されて当然」の存在ではなかっただろうか?
少なくとも親が学校に食って掛かるような風潮はうちの学校にはなかったな。
まあ確かに「校内暴力」と言う言葉が生まれ、「ツッパリ」なんかがはやったけど。(80年代)けれどその10年後にもうはやこんな風に「崩壊」が始まっていたのだろうか?
2002年には少なくともこんな風潮になっていたからこそ書いたんだろうけど。
1990年から2000年の間。確かに価値観が変わりつつあったかもしれないけれど
まだ、今現在ほど貧困にあえぎ、責任転嫁をするような親は一部だったはず。
その時代のギャップ感がどうしてもぬぐえずに集中できないのも確か。

1990年に中学2年だった子はもう「道徳観」がないままだったのだろうか?
たとえ誰にも知られなくても、松子にさえ知られていないとしても、
自分のやったことは自分が知っている。それは自分の中に根を下ろす。
天が知らずとも、地が知らずとも、われはそれを知っている。
昔のいわれを樹里は知らない。

知らんか~?
1972年+4=1976年生まれ
 現在37~8歳の人ってもうこんな常識のない親に育てられているのか?
「おてんとうさんが見ているよ」「人に笑われるよ」的な教育(しつけ)をされずに育っている世代なのか?
今の30代の子育てがむちゃくちゃ(自分さえよければ、と言う考えで行動しまくっている。スーパーでの子供に対する接し方の低レベルさにはあきれ果てる)
なのは当然の結果なんだろうか?

とまあ、ミステリーを読んでいるのではない気分になっている。
さて、中学生が親や学校と言うより「大人」にはこれ以上任せてはおけない!と
立ち上がるところで第一部終了。

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